母語人口から考える翻訳需要
グローバル化が進む現代において、多言語への対応は企業の重大な課題となっています。
しかし、現在世界中では約7000の言語が使用されていると言われており、実際にどこまでの言語に対応できていればいいのか判断がつかないケースもあるのではないでしょうか。
そんな時に1つの判断基準となるのが世界の母語人口ランキングです。使用している人が多い言語ほど翻訳のニーズが高いと言うことができるため、多言語化を進める際にはぜひ参考にしたいデータです。
今回の記事では、世界の母語人口ランキングをご紹介していきます。
母語人口ランキング TOP20
1. 中国語
中国語を母語とする人は約13億7000万人で、公用語としている地域には中華人民共和国(中国本土、香港、マカオ)と台湾、シンガポールがあります。中国には多数の地域言語がありますが、ここでは標準語(普通話)を指します。
2. 英語
英語を母語とする人は約5億3000万人で、公用語としている地域にはイギリス、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、インド、ニュージーランドなどがあります。世界共通語である英語の翻訳ニーズは高いと言えるでしょう。
3. ヒンディー語
ヒンディー語を母語とする人は約4億2000万人で、公用語としている地域にはインドとフィジーがあります。ヒンディー語は公用語としてインドの憲法に定められており、主にインド北部・中部地域で使用されています。デーヴァナーガリー文字で表記します。
4. スペイン語
スペイン語を母語とする人は約4億2000万人で、公用語としている地域にはスペイン、アルゼンチン、チリ、メキシコなど全20カ国と地域があります。ラテンアメリカ地域の国際共通語とされています。
5. アラビア語
アラビア語を母語とする人は約2億3000万人で、公用語としている地域にはエジプト、イラク、イスラエル、モロッコ、サウジアラビア、アラブ首長国連邦など全27カ国があります。使用される国と地域の数では世界で3番目の多さです。
6. ベンガル語
ベンガル語を母語とする人は約2億2000万人です。バングラデシュの国語で、インドのベンガル地方でも話されています。
7. ポルトガル語
ポルトガル語を母語とする人は約2億1500万人で、主にポルトガルとブラジルで使用されています。人口の多いブラジルの公用語であることから、話者数が多くなっています。
8. ロシア語
ロシア語を母語とする人は約1億8000万人で、ヨーロッパで最も母語話者が多い言語です。国連で指定されている6つの公用語の1つで、キリル文字が使われます。
9. 日本語
日本語を母語とする人は約1億2700万人で、日本の公用語です。平仮名、片仮名、縦書き、横書きといった様々な表記方法があり、他言語に比べて表記体系が複雑なのが特徴です。
10. フランス語
フランス語を母語とする人は約1億2300万人で、公用語としている地域にはヨーロッパではフランス、ベルギー、スイス、ルクセンブルグ、モナコ、北アメリカではカナダとハイチ、アフリカではコンゴ、マダガスカル、コートジボワール、カメルーンなど全部で29カ国が挙げられます。
筑波大学外国語センターによるとフランス語を母語とする人の人口は1億2300万人とされていますが、Ethnologueのデータでは母語とする人以外も含めた全世界でのフランス語話者数はおよそ2億8400万人いるとされています。
11. ドイツ語
ドイツ語を母語とする人は約1億2300万人で、公用語としている地域にはドイツ、オーストラリア、スイス、ベルギーなどヨーロッパの多くの国があります。イタリア北部の一部の地域でも公用語とされています。
12. パンジャーブ語
パンジャーブ語を母語とする人は約9000万人で、インドとパキスタンにまたがるパンジャーブ地方の方言です。インドのパンジャーブ州で公用語とされており、またインドのデリーで第2公用語として使われています。パキスタンにおいては最も話者数が多い言語ですが、公用語には指定されていません。
13. ジャワ語
ジャワ語を母語とする人は約8400万人で、インドネシアのジャワ島中央部から東部で話されている言語です。インドネシアの公用語ではありませんが、ジャワ語を母語としている人の数はインドネシアで第1位です。
14. 朝鮮語・韓国語
朝鮮語・韓国語を母語とする人は約7500万人で、韓国・北朝鮮の公用語です。朝鮮民族が使う言語です。
15. タミル語
タミル語を母語とする人は約7400万人で、公用語としている地域はスリランカとシンガポールです。南インドのタミル州で主に話されている言語で、その他にもマレーシアやマダガスカルなどにも話者が存在しています。
16. ベトナム語
ベトナム語を母語とする人は約7000万人で、ベトナムで公用語として話されています。ベトナム総人口の87%を占めるキン族の母語です。
17. テルグ語
テルグ語を母語とする人は約7000万人で、主にインドの南東部で話されています。インドの22の指定言語に含まれています。
18. マラーティー語
マラーティー語を母語とする人は約6800万人で、インド西部の州の公用語とされています。隣接する様々な州でも使われており、インドの22の指定言語に含まれています。
19. ウルドゥー語
ウルドゥー語を母語とする人は約6100万人で、主にパキスタンと北インドで使われています。基盤となった言語はヒンディー語と共通で姉妹関係にある言語ですが、ウルドゥー語は主にイスラム教徒が利用しておりペルシャ語やアラビア語の影響を受けています。パキスタンでは国語の位置づけになっている言語です。
20. イタリア語
イタリア語を母語とする人は約6100万人で、公用語としている地域には、イタリアとサンマリノ共和国、そしてスイスの一部地域があります。バチカン市国でも一般的に話されている言語です。
多くの国で話される言語、人口増加地域で話される言語は需要拡大
母語人口順では人口の多い国の言語が上位となっており、圧倒的な人口を持つ中国語は今後もトップを維持するものと考えられます。使用される地域が多く、特に人口増加している国々で話されるスペイン語やアラビア語、フランス語といった言語は、今後更に需要が高まっていくものと思われます。
インド国内で話される言語はヒンディー語、ベンガル語、パンジャーブ語、タミル語をはじめ多岐に亘りますが、これらの言語は今後インドの人口増加と経済発展と共にビジネス面でも重要な言語となっていくことが予想されます。
1つの参考資料として考える
母語人口は1つの判断基準として参考にはなりますが、自社がどういった層にアプローチしていきたいかという視点も多言語化を検討する上では重要なポイントです。一概に母語人口が多いからといって、片っ端から母語人口が多い言語順に多言語化対応していくのは、本来の目的にそぐわない可能性もあります。
自社ではどういった目的で、どのターゲット層に向けて多言語化を進めていくかを念頭に置いた上で、母語人口ランキングなどのデータも参考にするといいでしょう。