翻訳に欠かせないポストエディットとは

近年、機械翻訳は急激な進化を遂げており、以前とは比べものにならないほど格段と翻訳制度が向上しています。

しかし、翻訳精度が高まった現在でも、機械翻訳のみで完璧に翻訳するのは難しいのが実情です。まだまだ機械に翻訳のすべてを委ねるのは難しく、人間のチェックを必要としています。

今回は、翻訳の質を高めるために必要なポストエディットについて詳しく解説していきます。

ポストエディットとは

ポストエディットとは、機械翻訳された訳文を再度人の目でチェックし、翻訳ミスやニュアンスの違い、不自然な文章などを見つけて修正する作業です。

最近では機械翻訳の精度が向上しており、人が一から翻訳するよりも何倍も速いスピードで正確な翻訳ができるようになっています。

翻訳精度が高くなり、ポストエディットがほとんど必要ない場合もありますが、微妙なニュアンスの修正やより読みやすい文章とするために人の手で修正を行う必要があります。

ポストエディットの品質が翻訳の品質を左右するといっても過言ではありません。ポストエディットは、翻訳作業において重要な役割を担っています。

翻訳の質を保つポストエディット

高い品質の翻訳には以下のポイントがあります。

正確・明瞭・簡潔(3C)
良い翻訳文といえるのは、正確さ(Correct)、明確さ(Clear)、簡潔さ(Concise)が意識されたものです。スペルミスや文法の間違いがなく、読み手にとって読みやすい翻訳文となっていることが重要です。

機械翻訳では、複数の意味を持つ単語が別の意味で翻訳されたり、不自然に長い翻訳文になったりすることがあります。そのため、人の目で見て確認し、修正する必要があります。

自然な文章の流れ
翻訳文に違和感が少なく、自然な流れの文章であることは、読みやすく品質の高い翻訳文にとって重要なポイントの1つです。

機械翻訳による翻訳では、どうしても文章を直訳したような不自然な表現になりがちです。読み手に優しい文章を作成するためには、より自然な表現になるような修正を加えることが望ましいといえます。

一貫性
元言語で使われる1つの単語に対して、一貫して同じ単語で翻訳することは、読み手の混乱防止の観点から非常に重要です。

機械翻訳では、都度翻訳後の単語が変わってしまうことがあるため、一貫性を保つために人の目で見て修正していく必要があります。

国際規格「ISO18587」とは

ポストエディットには国際標準規格として、「ISO18587」があります。これは2017年4月に正式に発行された国際規格です。

翻訳の国際規格としては2015年に発行されたISO17100が存在しますが、近年の世界的な機械翻訳需要の高まりにより、ポストエディット特定の規格であるISO18587が登場しました。

このISO18587には、ポストエディットについて以下のような事柄が規定されています。

・目的
・作業概要
・プロセス
・修正レベルや修正観点
・ポストエディターの持つべき資格
・ポストエディターの教育観点

ISO18587を取得するには、ポストエディットに関するガイドラインが社内で明確に定められており、そのガイドラインに沿って作業が行われる環境が整っていることを証明する必要があります。

従ってISO18587を取得している翻訳会社であれば、ポストエディットの作業品質が一定基準を満たしていることが分かります。

ポストエディットのメリット

コスト削減
一から翻訳を行うと時間がかかり、その分人件費の増大につながります。機械翻訳との併用によって時間と人件費を大幅に削減することができます。

機械翻訳による翻訳の質が大きく向上しているため、ポストエディットが必要な誤訳が減っており、近年では人による誤訳やニュアンスチェックにかかる時間も大幅に減っています。

時間短縮
機械翻訳の翻訳スピードは、人間による翻訳よりも圧倒的に速く、より多くの翻訳をこなすことができます。従って翻訳作業時間が大幅に短縮されます。

機械翻訳の精度が高ければポストエディット作業がほとんど不要な場合もあり、時間短縮につながります。一方で人間によって翻訳された場合、一からの翻訳に時間がかかるのに加え、人の目によるダブルチェックでさらに作業時間が長くなってしまいます。

翻訳難易度に作業時間が左右されにくい
機械翻訳による翻訳は、翻訳の難易度が高くても作業時間が変動することはありません。一方で人による翻訳の場合、専門性の高い文章や難易度の高い単語が頻用される文章であれば、翻訳に時間がかかる可能性があります。

作業時間にブレのない機械翻訳を用いることで、翻訳作業スケジュールが立てやすくなるというメリットもあります。

ポストエディット導入の注意点

次に機械翻訳とポストエディットを活用する際の注意点について説明します。

機械翻訳の精度が低いと、ポストエディットの方が時間やコストがかかる
ポストエディットがほとんど必要ない、または簡単な修正で済ませることができるのは、機械翻訳の精度が高い場合に限られます。機械翻訳の精度が低いと、全体的に修正する必要があるため、かえって時間やコストがかかってしまいます。

ポストエディットの質次第で翻訳品質も変わる
ポストエディットには、全体的に修正するフルエディットと、一部分のみ修正するライトエディットがあります。このポストエディットのレベルによって文章の品質が大きく変わります。

フルエディットであれば時間がかかりますが、より自然で読みやすい質の高い翻訳になります。一方でライトエディットの場合にはコストや時間が少なく済みますが、機械翻訳の質が低いと文章の品質も低いものになる可能性があります。

ポストエディットにかけるコストや時間次第で、翻訳品質も変わってきてしまう点が注意点といえます。

ポストエディット向きの用途

ポストエディットは、機械翻訳によって出力された翻訳をベースに作業が行われるため、機械翻訳の出力結果が一定でないとポストエディットによって仕上げる訳文の品質にもムラが出やすくなります。

また、人間の目で確認、修正されたとしても、機械翻訳らしい訳文が残ってしまうため、文書や用途によってポストエディットの向き不向きがあります。

ポストエディット向きのものは、社内観覧用のマニュアル、情報収集用の社内資料、後に社内で推敲を行うような文書など、社内向きで厳密さがそこまで求められない文書が挙げられます。

ポストエディットに向かないものは、プレスリリースやユーザーマニュアルなど外部向けの文書、専門用語や固有名詞に厳密な正確性が求められる文書、訳文の読みやすさが求められる文書など、外部向けや専門的な文書が挙げられます。

基準を満たすレベルのポストエディットを行う翻訳会社に依頼しましょう

機械翻訳とポストエディットを活用することで翻訳のコストや時間が大きく削減される一方で、機械翻訳の精度とポストエディットにかける時間によって翻訳の質が変わってしまいます。

ウェブサイトの多言語化のため翻訳会社へ依頼する際には、より高い品質の翻訳を実現するためにも、翻訳会社のポストエディットプロセスや社内体制について把握するのが望ましいでしょう。

最新情報をチェックしよう!