日本語を母語としない人が書いた日本語を読む際、違和感を覚えることがあるのではないでしょうか。これは外国語でも同様で、ネイティブ以外の人による翻訳だとどうしても不自然な表現になってしまうことがあります。
そういった表現の適切さや言い回しを正しく修正する作業がネイティブチェックです。今回は、ネイティブチェックの必要性やネイティブチェッカーに必要な能力について解説します。
ネイティブチェックとは
一般的にネイティブチェックとは、翻訳された文章上の誤りや不自然な表現を、その言語を母語とする人が修正し、より言語として自然な文章にする作業を指します。
たとえば、翻訳会社にネイティブチェック付きの和英翻訳を依頼する場合、翻訳者が日本語から英語に翻訳した文章を、英語を母語とするネイティブスピーカーがチェックします。文章を確認していき、不自然な点を修正しながら完成させていきます。
ネイティブチェックが必要な理由
まず、ネイティブチェックが必要な理由を3つ解説します。
翻訳文に違和感があると内容が信頼されにくい
日本語を母語としない人が書いた日本語に不自然な言い回しや単語の使われ方が含まれているのと同様に、日本人がネイティブでない外国語に翻訳した文章には不自然な表現や適当でない単語が使われていることがあります。
そういった文章はその言語のネイティブにとって読みづらく、内容が頭に入りづらくなるというデメリットがあります。
また、翻訳した文章に不自然な単語や文章が含まれていると、その情報が正確なものなのか確信できず、内容の信頼性が下がってしまいます。
特に商品の説明や会社について翻訳がなされている場合に読み手にとって不自然な表現が含まれていると、その商品や会社そのものの信頼性も疑われてしまう可能性があります。
それと同時にその国の言語を理解できる人が社内にいないことが分かってしまうため、真っ当な取引相手として認識されなくなる可能性もあります。
プロの翻訳者でも判断が難しい部分がある
たとえプロの翻訳者であっても、その言語を母語としない以上、正しく表現できないこともあります。英語におけるa、theの使い分けといった文法の細かなところや、伝わりやすい言い回しなどはネイティブでないと判断が難しい部分があります。
より質の高い、読み手にとって読みやすい文章にするためには、ネイティブスピーカーにチェックしてもらった方がいいでしょう。
トラブル回避
翻訳した文章に不自然な表現が入ってしまうことで、その内容について誤解が生まれる可能性もあります。
そういった誤解は後々トラブルにも繫がりかねないため、翻訳とネイティブチェックの段階で、自社が本当に伝えたい内容が適切に翻訳されているのか、読み手に伝わるのかどうかを確認する必要があります。
ネイティブチェッカーに必要な能力
ネイティブスピーカーであれば誰にでもチェックをお願いしてもいいというわけではありません。校正・編集者としてある程度の能力が必要です。ネイティブチェッカーに必要な具体的な能力をご紹介します。
翻訳したい言語を母語としている
ネイティブチェッカーとして活動するにはまず、その言語を母語としている必要があります。ただ話せるだけでなく、きちんとその言語を使った教育を受けてきたり、文章を書いてきたりした経験がある方が望ましいです。その言語で公開される文章としてのマナーを守った形で文章を書ける人である必要があります。
文法に詳しく、文章力を有している
ネイティブの中でも、一定以上の文章力を持つ人を選ぶ必要があります。たとえば日本語でも、話し言葉には使えても書き言葉としては相応しくない言い回しがありますが、外国語でも同様です。
フォーマルな書き言葉に適した単語を選択し、適切に使用できる文章力と文法知識を備えている人である必要があります。
そのため、学歴が高かったり、文章に関わる仕事の経歴を持っていたりするネイティブスピーカーに依頼する方が、質の高いネイティブチェックを受けられる可能性が高いと言えます。
専門知識を備えている
たとえネイティブであっても、誰でもいいというわけにはいきません。その文章の内容について専門知識があり、正しく翻訳内容を精査できる人が望ましいと言えます。
翻訳後の言語でも同じものを意味する正しい単語が使われているのか、文章の論理が立っているか、業界用語の使われ方は正しいか、など多くのチェックすべき点があります。
したがって、専門的な文章について単語や文脈から意味をきちんと理解できる専門知識を持ったネイティブチェッカーである必要があります。
ネイティブチェックの外注が必要になるシチュエーション
ネイティブチェックを外注するべきシチュエーションには、以下のような場合が考えられます。
・自分で翻訳したけれど、文法や表現が適切かどうか確認したい
・国際的な雑誌に載る論文の提出前に、英語表現のチェックを受けたい
・自社商品を海外向けにアピールするために洗練されたWebコンテンツを書きたい
・店のホームページを多言語化する際に、読み手に正しく内容が伝わっているのか確かめたい
海外進出やインバウンド需要が高まる昨今では、ネイティブチェックへの需要は年々高まっており、上記のような様々なシチュエーションで活用されています。
ネイティブチェックを依頼すべき分野
特にネイティブチェックを依頼すべき分野として、専門領域やビジネス文書が挙げられます。
医療、エンジニアリング、外交、法律などの専門領域
専門領域と言われるような医療、エンジニアリング、外交、法律に関する文章については、情報を正確に伝えるという点で知識のあるネイティブチェッカーによる校正・修正がかなり重要であると言えます。
1単語の違いが双方の認識のズレを生じさせる可能性もあるため、この専門領域の知識や職務経験を持つネイティブスピーカーによる修正は不可欠だと言えます。
商品やサービスを伝えるビジネス文書
インバウンド向けであっても海外進出向けであっても、自社商品を正確かつ魅力的に伝えるためには、Webコンテンツのライティングや翻訳だけでなく、ネイティブチェックも重要です。
ネイティブにとってより自然で正しい表現であることは、自社商品や会社について知ってもらいやすく、イメージの向上にも繫がると考えられます。
ネイティブチェックの相場
翻訳会社にもよりますが、ネイティブチェックの相場は1ワードあたり5〜15円のことが多いです。言語や専門性、納期によっても金額が変わるため、どういう条件で翻訳してもらいたいかを考えた上で依頼するといいでしょう。
また、もともとネイティブチェックが翻訳パッケージに含まれている場合もあるため、パッケージとして組み込まれたサービスを利用する方法もあります。
ネイティブチェックの重要性
ネイティブチェックの工程をはさむことで、読み手にとってより理解しやすい、自然な翻訳文を作ることができます。また、翻訳の相違による認識のズレを防ぐことができ、大きな問題になる前のリスクヘッジの1つとしても考えることができます。
海外向けのサイトや文書を翻訳する際には、単に翻訳を行うだけでなく、ネイティブチェックの工程も含めることが大切です。